スウェーデンから学ぶ!Stora Coop Visby に見る食品ロス削減の最前線

10月は「食品ロス削減月間」。国連のSDGs目標12.3でも掲げられているように、2030年までに世界の食品ロスを半減させることが目標となっています。日本でも食品リサイクル法や消費者庁の啓発活動など、行政・企業・消費者それぞれに責任と行動が求められています。

小売業も例外ではありません。店頭での廃棄をどう減らすかは、経営効率と社会的責任の両立という観点から大きな課題です。そんな中で世界の先進事例として注目されているのが、スウェーデン・ゴットランド島にある大型スーパーマーケット Stora Coop Visby です。

Scopeでは2019年以来、スウェーデン視察ツアーを開催し、Stora Coop Visbyを現地で視察してきました。本記事では、同店がどのようにして食品ロス削減を実現してきたのかを紹介します。

1. Stora Coop Visbyとは

Stora Coop Visbyは、スウェーデンの観光地ゴットランド島にある最大規模のスーパーマーケットです。

同店は食品ロス削減において圧倒的な成果を上げており、2018年には年間約120トンあった食品廃棄を、2023年にはわずか4〜7トンへと大幅に減らしました。こうした取り組みは国内外で高く評価され、複数のサステナビリティ関連アワードを受賞しています。

2. 食品ロス削減への具体的な取り組み

① 予防(売場オペレーションの改善)

期限チェックのデジタル化
Expiry Managementを導入し、棚順に沿ってスキャンすることで期限接近商品を自動特定。値下げや用途転換の指示まで一元化しました。その結果、日付チェック時間を70%削減し、廃棄量を86%減らす効果を公表しています。

データ駆動の発注最適化
SKUごとに廃棄量と時間帯を分析し、次回発注量を自動でレコメンド。例えば「赤りんごは次週-5%」といった具体的な発注調整を実現しています。

② 価格・販売(廃棄前の売切り)

  • ⦿ 期限接近品をアプリの指示に基づいて即時値下げ。
  • ⦿ “見た目不揃い”の青果を積極的に販売。
  • ⦿ 鮮魚売場では毎週月曜に「オークション方式」で売切りを実施。
  • ⦿ さらに、余剰食品アプリ Too Good To Go を活用し、全国規模で「サプライズバッグ」の販売を拡大。

③ リパーパス(店内での用途転換)

  • ⦿ ベーカリーの余りをガーリックトーストやパン粉に加工。
  • ⦿ バナナなどの余剰青果を地元のアイスクリームメーカーへ提供。
  • ⦿ 乳児用ミルクやオーツを地元蒸留所と連携し、蒸留酒「SPILL」としてアップサイクル。

※「リパーパス(repurpose)」は 本来捨てられるはずだった商品や原材料を、店内や地域で別の用途に活用すること を指します。

④ リサイクル/循環

  • ⦿ 店内には生ごみ処理機「GreenBox」を設置し、残余食品を肥料化。
  • ⦿ 肥料は屋上ガーデンで使用され、育てた作物は販売にもつながっています。

⑤ コミュニティ連携(寄贈・地域循環)

  • ⦿ 学生主導から始まった「Food Rescue Gotland」と連携し、スーパーの余剰食品を地域に再分配。地域社会と一体となった循環を生み出しています。

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スウェーデンで最も先進的なサステナブル・ストア / Stora Coop, Visby

3. 日本への示唆

Stora Coop Visbyの取り組みは、日本の小売現場にも応用できるヒントにあふれています。

  • 期限チェックの効率化 → 人手不足解消に直結
  • 値引き販売や寄付の仕組み → 顧客満足と社会貢献の両立
  • リパーパスや地域循環 → 地域ブランドや新しい価値創出につながる

食品ロス削減月間を契機に、日本の小売現場でも自社の取り組みを見直すきっかけとできるでしょう。

4. スコープの「サステナビリティ視察ツアー in スウェーデン」

Scopeでは2019年から継続的にスウェーデンへの視察ツアーを実施し、Stora Coop Visbyをはじめとする先進的な小売現場や地域循環の事例を学んでいます。

来年も「サステナビリティ視察ツアー in スウェーデン」の開催を予定しています。食品ロス削減やサステナブル経営に関心のある方には、現地でのリアルな学びを得る貴重な機会です。

ご興味のある方は、ぜひご一報ください。

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結論・まとめ

Stora Coop Visbyの事例は、単なる食品廃棄削減にとどまらず、「店舗運営の効率化 × 社会的価値の創出」を見事に両立させています。

食品ロスは世界共通の課題であり、日本でも持続可能な社会の実現に向けて、こうした先進事例から学び、自社に取り入れていくことが求められています。

「Expiry Management(エクスパイリー・マネジメント)」は、賞味期限管理に特化したデジタルツールです。

商品ごとに賞味期限を入力するだけで販売期限を自動モニタリングし、期限が近づいた商品をスタッフへ即座に通知します。これにより、チェック作業の負担を大幅に軽減し、廃棄ロスの削減にもつながります。

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