~10年前のニューシーズンズ・マーケットの取り組み~

 前回は、スウェーデンのCoop Visbyでの、サステナビリティの取り組みを紹介させていただきました。今回は、米国オレゴン州ポートランドの店舗の取り組みについて、それも筆者が10年前に現地取材した内容をご紹介させていただきます。10年前にこだわった理由は、現在のようなSDGsのムーブメントが無い中での取り組みを紹介することで、企業や店舗がサステナビリティに取り組む意義やその本質が浮き彫りになると思えたからです。

2021年10月12日  Whywaste Japan シニア・オフィサー 小川訓昌

■ニューシーズンズ・マーケット  ※以下、ニューシーズンズと表記

ニューシーズンズは、 地方の食品スーパーとして、Walmartをはじめとした競合各社と肩を並べるために「サスティナビリティ」に絞り込んで独自化(差別化)戦略を展開しました。
●米国オレゴン州ポートランドを拠点とするスーパーマーケット
●2000年2月の創業
●ポートランドを代表する地域密着型の自然・健康志向の食品業態。
●地元住民から最も賞賛されている店舗
●11店舗を展開(2011年当時)

■サステナビリティの本質

 2011年の初夏、筆者はオレゴン州ポートランドを訪れました。「サステナビリティ」という言葉に触れたのはこの機会が初めてでした。当時は、国連がSDGsを掲げる4年前だったこともあり、日本においては周知さた言葉ではありませんでした。この取材で、サステビリティの本質と具体的な取り組みを学ぶことになります。当時のメモにはこう記されています。

サステナビリティ(持続可能性)=「大事にしたいこと」を守っていくこと。
⇒ 将来に渡って、良い社会と自然環境を保ち続けること
⇒ ①自然 ②健康 ③生産者 ④地域 ⑤職場

 はじめて出会う言葉でしたが、「大事にしたいことを守っていく」という概念が妙に腹落ちした記憶があります。ニューシーズンズの店内では、その企業としてのポリシーの見える化が徹底され、品揃えや施策展開で具現化されていました。今回は、その一部をご紹介します。

企業ポリシーの見える化。左:店舗外観 中:エントランス 右:ショッピングバッグ

■Localism & Organic(地産地消と健康志向)

●「Home Grown」オレゴンとワシントン州を中心とした地元育ちの品ぞろえを強調
●「Home Grown」該当商品は、店内の1/3以上の構成比
● 肉のコーナー表示は「LOCAL MEAT」。地元育ちだけの品揃え。
● ベーカリーはオーガニックの小麦だけを使用。全米で1社のみ。オーガニックにこだわるため、ペストリーは作らない。

HOME GROWN
Organic  小分け販売で包装売りも無し

■食材の持続可能性を啓発

●持続可能な漁法による魚を食べることを推奨。
  ”世界の漁業の65%は過剰に漁獲されています。
  持続可能な漁業にあなたのお金で投票してください。”
●パネルやPOPで説明
  緑 : 良い選択です!
  黄 : 持続が懸念される魚種です。
  赤 : 持続可能な方法で収穫または養殖されていません。

サステナブルな買物を提案

■地域とのコミュニケーション

「コミュニティのよりよいパートナーになろう」が社訓のひとつ。
● 入口そばに「Solution Center」
  ・試食(今週のおすすめ)とおすすめレシピを設置
  ・なんでも相談できる
  ・体調に合わせた食材やレシピの提案も
● イートインコーナーを地元住民の会合にも開放
● 「School Fruit」 販売利益の全額を地元学校に寄付
● 多くの地元の非営利団体に寄付
● ファーマーズマーケットにも寄付し生産者を応援

左:Solution Center(2014年の撮影) 右:「スクールフルーツ」のPOP(当日はりんごを販売)

■Sustainability Report

1年間の取り組みの実績(数値)を地元に紹介
一例)・地元非営利団体への寄付先数、654
   ・ファーマーズマーケットに5万ドル協賛
   ・2010年のスタッフ数は、1909人
   ・2011年には2店舗開店350人を雇用する など

タブロイド版のSustainability Report 年1回の発行

■まとめ

「サスティナビリティ」を経営に取り込み、独自化(差別化)戦略を展開した事例を紹介させていただきました。SDGsへの取り組みの要請が高まる中、これからますます、多様な課題(例えば、食品ロス対策など)に対しての具体的なアクションが求めてくるはずです。うわべの対応に追われるのではなく、経営戦略からサステナビリティに取り組む時代と言えるのではないでしょうか?今回の事例紹介が参考になれば幸いです。

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